参議院選挙アンケート結果の公表
当弁護団が1人区の参議院選挙候補者及び各政党に対して実施したアンケートの結果をご報告いたします。
参議院候補者について,与党候補者からは3名,野党候補者から13名の回答をいただきました(※自民党新人で山形選挙区に立候補されている月野薫氏からはお返事をいただいたものの,「質問内容が専門的」「選挙期間中で検討する時間が取れない」という理由で回答できないとのことでした。)。
政党からは,自民党,民進党,共産党,社民党から回答をいただきました(※おおさか維新の会からは,お返事をいただいたものの「貴団体からのアンケートには回答しないことが決定されました」との回答でした。)。
目次
- 1 1人区候補者に対するアンケート結果について
- 1.1 Q1 高額年収等の一定の要件の下で労働時間に関する規定の適用を除外する、いわゆる「高度プロフェッショナル制度」の導入や、企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大などを内容とする労働基準法改正案について(賛成・反対・その他で回答)
- 1.2 Q2 平成27年9月30日に施行された、労働者派遣の期間制限の変更などを内容とする、いわゆる労働者派遣法の改正法について(賛成・反対・その他で回答)
- 1.3 Q3 労働者が裁判上無効な解雇をされた場合にも、一定の条件の下、使用者が労働者に金銭を支払うことで解雇を有効とすることが可能となる、いわゆる解雇の金銭解決制度について(賛成・反対・その他で回答)
- 1.4 Q4 長時間労働削減のための具体的な対策として、①労働基準法に労働時間を延長する際の量的上限規制を導入すること、②勤務と勤務の間の休息時間(インターバル)付与の義務化を導入すること、③労働時間記録の法的義務化(罰則付)について
- 2 政党に対するアンケート結果について
- 2.1 Q1 高額年収等の一定の要件の下で労働時間に関する規定の適用を除外する、いわゆる「高度プロフェッショナル制度」の導入や、企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大などを内容とする労働基準法改正案について
- 2.2 Q2 長時間労働を防止するため新たに法的規制をすべきか
- 2.3 Q3 (Q2で規制すべきと答えた政党へ) 長時間労働を規制するためにいかなる規制方法がふさわしいか(複数回答可) ①割増賃金の割増率を上げる ②労働時間の上限を規制する ③労働と労働の間に一定の休息時間を定める(いわゆるインターバル規制) ④その他
- 2.4 Q4 平成27年9月30日に施行された、労働者派遣の期間制限の変更などを内容とする、いわゆる労働者派遣法の改正法について
- 2.5 Q5 労働者が裁判上無効な解雇をされた場合にも、一定の条件の下、使用者が労働者に金銭を支払うことで解雇を有効とすることが可能となる、いわゆる「解雇の金銭解決制度」について
- 2.6 Q6 雇用形態の違いで賃金の格差をつけないこととする、いわゆる「同一労働同一賃金」の原則について
- 2.7 Q7 (Q6で導入すべきと答えた政党へ) 「同一労働同一賃金」とはいかなる内容を意味するのか。具体的にお答えください。
- 2.8 Q8 (Q6で導入すべきと答えた政党へ) Q7で答えた「同一労働同一賃金」を実現するために、いかなる法規制が必要か。具体的にお答えください。
- 2.9 Q9 一定額の残業代を予め基本給に組み込む、あるいは一定額の手当の形で残業代を支給する、といった方法で、実際の時間外労働時間等にかかわらず、一定の残業を行ったものとみなして定額の賃金を支払う制度(いわゆる固定残業代・固定残業手当、事実上8時間労働制の原則を変更する結果となる)について
- 2.10 Q10 (Q9で問題のある制度であると答えた政党へ) 固定残業代・固定残業手当の制度に対して、何らかの法的規制が必要か、必要とすればいかなる規制が必要か
- 2.11 Q11 企業が、求人段階(求人票の記載等)における労働条件と、実際に締結される労働契約における労働条件に相違を設けること(「求人詐欺」と呼ばれるもの)について
- 2.12 Q12 (Q11で問題があると答えた政党へ) 「求人詐欺」の手法に対して、何らかの法的規制が必要か、必要とすればいかなる規制が必要か
- 2.13 Q13 違法な残業代の不払いが長年にわたって散見される状況であるが、労働基準監督官の増員は必要か
- 2.14 Q14 現行の労働基準法上、労働時間の記録について明文の規定もなく、罰則もない状況であるが、規制は必要か
1人区候補者に対するアンケート結果について
Q1 高額年収等の一定の要件の下で労働時間に関する規定の適用を除外する、いわゆる「高度プロフェッショナル制度」の導入や、企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大などを内容とする労働基準法改正案について(賛成・反対・その他で回答)
候補者名 | 所属 | 選挙区 | 意見 |
---|---|---|---|
熊谷大 | 自・現 | 宮城 | 賛成 |
若林健太 | 自・現 | 長野 | その他 |
古庄玄知 | 自・新 | 大分 | その他 |
木戸口英司 | 無・新 | 岩手 | 反対 |
道用悦子 | 無・新 | 富山 | 反対 |
柴田未来 | 無・新 | 石川 | 反対 |
横山龍寛 | 無・新 | 福井 | 反対 |
杉尾秀哉 | 民・新 | 長野 | 反対 |
田野辺隆男 | 無・新 | 栃木 | 反対 |
由良登信 | 無・新 | 和歌山 | 反対 |
黒石健太郎 | 民・新 | 岡山 | 反対 |
田辺健一 | 共・新 | 香川 | 反対 |
永江孝子 | 無・新 | 愛媛 | 反対 |
阿部広美 | 無・新 | 熊本 | 反対 |
下町和三 | 無・新 | 鹿児島 | 反対 |
伊波洋一 | 無・新 | 沖縄 | 反対 |
回答者ごとの詳細な理由はこちら↓
http://black-taisaku-bengodan.jp/q1-riyuu/
Q2 平成27年9月30日に施行された、労働者派遣の期間制限の変更などを内容とする、いわゆる労働者派遣法の改正法について(賛成・反対・その他で回答)
候補者名 | 所属 | 選挙区 | 意見 |
---|---|---|---|
熊谷大 | 自・現 | 宮城 | 賛成 |
若林健太 | 自・現 | 長野 | その他 |
古庄玄知 | 自・新 | 大分 | 賛成 |
木戸口英司 | 無・新 | 岩手 | 反対 |
道用悦子 | 無・新 | 富山 | 反対 |
柴田未来 | 無・新 | 石川 | 反対 |
横山龍寛 | 無・新 | 福井 | 反対 |
杉尾秀哉 | 民・新 | 長野 | 反対 |
田野辺隆男 | 無・新 | 栃木 | 反対 |
由良登信 | 無・新 | 和歌山 | 反対 |
黒石健太郎 | 民・新 | 岡山 | 反対 |
田辺健一 | 共・新 | 香川 | 反対 |
永江孝子 | 無・新 | 愛媛 | 反対 |
阿部広美 | 無・新 | 熊本 | 反対 |
下町和三 | 無・新 | 鹿児島 | 反対 |
伊波洋一 | 無・新 | 沖縄 | 反対 |
回答者ごとの詳細な理由はこちら↓
http://black-taisaku-bengodan.jp/q2-riyuu/
Q3 労働者が裁判上無効な解雇をされた場合にも、一定の条件の下、使用者が労働者に金銭を支払うことで解雇を有効とすることが可能となる、いわゆる解雇の金銭解決制度について(賛成・反対・その他で回答)
候補者名 | 所属 | 選挙区 | 意見 |
---|---|---|---|
熊谷大 | 自・現 | 宮城 | 賛成 |
若林健太 | 自・現 | 長野 | 反対 |
古庄玄知 | 自・新 | 大分 | その他 |
木戸口英司 | 無・新 | 岩手 | 反対 |
道用悦子 | 無・新 | 富山 | 反対 |
柴田未来 | 無・新 | 石川 | 反対 |
杉尾秀哉 | 民・新 | 長野 | 反対 |
田野辺隆男 | 無・新 | 栃木 | 反対 |
由良登信 | 無・新 | 和歌山 | 反対 |
黒石健太郎 | 民・新 | 岡山 | 反対 |
田辺健一 | 共・新 | 香川 | 反対 |
永江孝子 | 無・新 | 愛媛 | 反対 |
阿部広美 | 無・新 | 熊本 | 反対 |
下町和三 | 無・新 | 鹿児島 | 反対 |
伊波洋一 | 無・新 | 沖縄 | 反対 |
回答者ごとの詳細な理由はこちら↓
http://black-taisaku-bengodan.jp/q3-riyuu/
Q4 長時間労働削減のための具体的な対策として、①労働基準法に労働時間を延長する際の量的上限規制を導入すること、②勤務と勤務の間の休息時間(インターバル)付与の義務化を導入すること、③労働時間記録の法的義務化(罰則付)について
候補者名 | 所属 | 選挙区 | 意見 |
---|---|---|---|
熊谷大 | 自・現 | 宮城 | 賛成 |
若林健太 | 自・現 | 長野 | 賛成 |
古庄玄知 | 自・新 | 大分 | その他 |
木戸口英司 | 無・新 | 岩手 | 賛成 |
道用悦子 | 無・新 | 富山 | 賛成 |
柴田未来 | 無・新 | 石川 | 賛成 |
杉尾秀哉 | 民・新 | 長野 | 賛成 |
田野辺隆男 | 無・新 | 栃木 | 賛成 |
由良登信 | 無・新 | 和歌山 | 賛成 |
黒石健太郎 | 民・新 | 岡山 | 賛成 |
田辺健一 | 共・新 | 香川 | 賛成 |
永江孝子 | 無・新 | 愛媛 | 賛成 |
阿部広美 | 無・新 | 熊本 | 賛成 |
下町和三 | 無・新 | 鹿児島 | 賛成 |
伊波洋一 | 無・新 | 沖縄 | 賛成 |
回答者ごとの詳細な理由はこちら↓
http://black-taisaku-bengodan.jp/q4-riyuu/
政党に対するアンケート結果について
Q1 高額年収等の一定の要件の下で労働時間に関する規定の適用を除外する、いわゆる「高度プロフェッショナル制度」の導入や、企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大などを内容とする労働基準法改正案について
自民党→賛成
民進党→反対
共産党→反対
社民党→反対
理由
自民党(賛成)
理由:現在提出している労働基準法等改正法案は、長時間労働を是正するとともに、多様で柔軟な働き方を推進するものです。
まず、全ての労働者の働き過ぎを防止するため
・一定日数の年次有給休暇の確実な取得のための措置
・中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の引上げ
・長時間労働に対する指導の強化
を行うこととしています。
さらに、企画業務型裁量労働制の見直しや高度プロフェッショナル制度の創設に当たっては、対象となる労働者が長時間労働とならないよう
・企画業務型裁量労働制では、適正な「みなし時間」の設定の徹底を指針で促し、健康確保措置の充実を図る
・高度プロフェッショナル制度では、インターバル規制などの健康確保のための厳しい措置を講じる
こととしています。このように、本法案は、長時間労働を是正し、労働者の健康を確保しつつ、その意欲や能力を発揮できる新しい選択肢を設けるものであるため、本法案に賛成です。
民進党(反対)
・「高度プロフェッショナル制度」については、労働者の心身を守るために設けられている「1日8時間・週40時間」という基本的な保護さえ与えられず、残業代や深夜割増賃金・休日手当も支払われない。健康確保措置も不十分で、過重な長時間労働を合法的に強いられるようになる。
・企画業務型裁量労働制では、約43%の事業場が労働時間を「不明」と回答している実態もあり、過労死など労災の認定を受けることすら困難である。対象を営業職などに拡大することは危険である。
共産党(反対)
高度プロフェッショナル制度、裁量労働制の営業職などへの拡大は、労働時間規制を全面的に外すもので、何時間働いても残業代は出ず、事前に決めた時間分しか給与が支払われません。この「残業代ゼロ」制度がいったん導入されれば、「高額年収」などの要件が緩和され、対象が限りなく広がっていくことは明らかです。この制度の本家であるアメリカでは、月収20万円程度の労働者が対象となっています。この制度を許せば、8時間労働制が否定され労働基準法の法体系も崩壊しかねず、日本社会全体が労働者を「使い捨て」「使いつぶし」にする総ブラック企業化となり、「働く人が世界一住みにくい国」にされてしまいます。
社民党(反対)
政府同法案は、長時間労働・深夜労働を野放しにするものです。労働者の命と健康を守る立場から反対です。「残業代ゼロ」を合法化することも非常に問題です。
Q2 長時間労働を防止するため新たに法的規制をすべきか
自民党→規制すべき
民進党→規制すべき
共産党→規制すべき
社民党→規制すべき
理由
自民党(規制すべき)
長時間労働の是正は、労働者の健康やワーク・ライフ・バランスを確保する上で、非常に重要な課題であり、一億総活躍社会の実現に不可欠な取組と認識しています。
民進党
民進党は今年の通常国会に、残業時間の上限を規制し、退社から翌朝の出社まで11時間の間隔を義務付けることをめざす「長時間労働規制法案」を国会に提出しています。
共産党(規制すべき)
日本では、ヨーロッパと違い、労働基準法が残業の上限を定めていないため、長時間労働が野放しになっています。その労基法さえふみにじる「サービス残業(ただ働き残業)も依然として横行しています。日本共産党は、こうした労働法制の規制緩和を許さず、残業時間の上限規制、連続休息時間(勤務間インターバル)として最低11時間を確保するなど、働き方のルールを強化します。
社民党(規制すべき)
日本では、過半数組合または過半数代表者との労使協定(36協定)さえあれば、事実上無制限の時間外休日労働が許されます。強力な法的規制が必要です。
Q3 (Q2で規制すべきと答えた政党へ)
長時間労働を規制するためにいかなる規制方法がふさわしいか(複数回答可)
①割増賃金の割増率を上げる
②労働時間の上限を規制する
③労働と労働の間に一定の休息時間を定める(いわゆるインターバル規制)
④その他
自民党→④
民進党→②③
共産党→①②③④
社民党→①②③
自民党(④)
現在提出している労働基準法等改正案には、確実に年次有給休暇が取得できる仕組みの創設、中小企業における割増賃金率の引上げなど、長時間労働是正のための内容が盛り込まれています。さらに、平成28年6月2日に閣議決定されたニッポン一億総活躍プランにおける「36協定における時間外労働規制の在り方について、再検討を開始する」旨の方針を踏まえ、今後厚生労働省において検討がなされるものと認識しています。
民進党(②③)
民進党が今年の通常国会に提出した「長時間労働規制法案」に、上記②③に加えて下記の内容を盛り込んでいる。
・毎週1回以上の休日の付与義務の例外である4週間を通じ4日以上の休日を与える変形休日性について、過半数労働組合等の書面による協定を要件とする。
・事業場外労働に係るみなし労働時間制を適用するための要件である「労働時間を算定し難いとき」について、その内容を明確化する。
・裁量労働制について、使用者が、裁量労働制が適用されている労働者の「健康管理時間」(労働者が事業場内にいた時間と事業場外で労働した時間との合計時間)を把握するとともに、「健康管理時間」を一定範囲内とする措置を講ずることを要件とする。
・使用者に、労働時間管理簿を調製し、各労働者の労働した日ごとの始業・終業時刻、労働時間を記入することを義務付ける
・厚労大臣は、適正な労働条件の確保及び労働者の保護のため必要かつ適当であると認めるときは、労働基準法の規定に違反する行為を行った事業主の名称等を公表することができることを規定する。
共産党(①②③④)
未払い残業について、悪質な企業については企業名を公表するとともに、不払い残業代を2倍にして労働者に支払わせるようにします。「名ばかり店長」「名ばかり管理職」にたいする残業代不払いを許さず、中間管理職や裁量労働制で働く労働者の時間管理を厳格におこなわせます。当面、「残業は年間360時間以内」という大臣告示をただちに法定化し、厚生労働省の過労死基準(月80時間以上の残業)をこえるような残業時間を可能にする三六協定の「特別条項」を廃止します。残業割増率を現行25%増から50%増に、深夜・休日は100%に引き上げます。さらに、労働基準法を抜本的に改正して、拘束8時間労働制とし、残業時間を1日2時間、月20時間、年120時間に制限します。恒常的な長時間残業や有休をとれないことを前提にした生産・要因計画をなくします。深夜労働・交代制労働・過密労働をきびしく規制します。
社民党(①②③)
Q4 平成27年9月30日に施行された、労働者派遣の期間制限の変更などを内容とする、いわゆる労働者派遣法の改正法について
自民党→評価する
民進党→評価しない
共産党→評価しない
社民党→評価しない
理由
自民党(評価する)
昨年9月に成立した労働者派遣法改正法は、正社員を希望する方に、その道が開けるようにするとともに、派遣を選択される方についての待遇改善を図るものです。
民進党(評価しない)
実効性のある待遇改善策を講じないまま、派遣社員の受け入れ期間を事実上撤廃したことにより、“生涯”派遣で“低賃金”の派遣社員が増える怖れがあるため。
共産党(評価しない)
派遣労働を臨時的・一時的業務に限定する担保だった原則1年・最大3年の期間制限を廃止し、人さえかえれば同じ業務でいつまでも派遣労働者を使えるようにするものです。派遣の受け入れを延長する場合、派遣先企業は職場の過半数労働組合等から意見聴取するだけで可能となり、実効的な歯止めがなく、派遣先への直接雇用についても企業に「依頼」するだけです。まさに「生涯ハケン」「正社員ゼロ」に道を開く大改悪です。
社民党(評価しない)
期間制限を専門業務以外にも拡大し、身分が不安定で処遇の低い派遣労働を拡大するものであり大問題です。常用代替の防止機能を弱める改悪です。
Q5 労働者が裁判上無効な解雇をされた場合にも、一定の条件の下、使用者が労働者に金銭を支払うことで解雇を有効とすることが可能となる、いわゆる「解雇の金銭解決制度」について
自民党→その他
民進党→導入に反対
共産党→導入に反対
社民党→導入に反対
理由
自民党(その他)
現在政府において、予見可能性の高い紛争解決システムの構築等について、日本再興戦略改訂2016(平成28年6月2日閣議決定)に基づき、「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」において、解雇無効時における金銭救済制度の在り方とその必要性を含め、予見可能性の高い紛争解決システム等の在り方の検討を進めているところと承知しています。
民進党(導入に反対)
「不当解雇」をしやすくすることになり、労働者を安易に切り捨てるブラック企業を合法化することになりかねない。
共産党(導入に反対)
制度化されれば、経営者の一方的な都合での解雇が横行し、解雇の多発など雇用のいっそうの不安定化をまねくものにほかなりません。カネさえ払えば首切り放題という「首切り自由の国」になってしまうことは明らかです。
社民党(導入に反対)
会社にとって金銭さえ払えば労働者を解雇することができる制度です。会社の都合で解雇解雇(原文ママ)が容易にできるようになるため、導入に反対です。
Q6 雇用形態の違いで賃金の格差をつけないこととする、いわゆる「同一労働同一賃金」の原則について
自民党→導入すべき
民進党→導入すべき
共産党→導入すべき
社民党→導入すべき
理由
自民党(導入すべき)
女性や若者などの多様で柔軟な働き方の選択を広げるためには、日本の労働者の4割程度をしめる非正規雇用で働く方の待遇改善は、待ったなしの重要課題です。我が国の非正規雇用労働者については、例えば女性では、30代半ば以降、結婚・子育てなどもあり、自ら非正規雇用を選択している方が多いことが労働力調査から確認できるほか、パートタイム労働者の賃金水準は、欧州諸国においては正規労働者に比べ2割低い状況であるのに対し、日本では4割低くなっています。このため、同一労働同一賃金の実現により、非正規雇用労働者の待遇改善を図り、正規労働者と非正規雇用労働者の賃金差について「欧州諸国に遜色のない水準」を目指すべきであると考えます。
民進党(導入すべき)
男女の賃金格差、正規雇用と非正規雇用の賃金格差を解消するために、「同一価値労働同一賃金」の法律をつくることが必要。
共産党(導入すべき)
正社員が当たり前の社会をめざし、有期雇用については臨時的・一時的業務、合理的な理由がある場合に限定し、「同一(価値)労働同一賃金」をはじめ賃金や有給休暇などの労働条件について正社員と均等待遇にするよう、労働基準法、男女雇用機会均等法、パート労働法、労働者派遣法などに明記する法改正をおこないます。有期雇用による不合理な労働条件を禁止した労働契約法第20条を厳しく守らせます。
社民党(導入すべき)
雇用形態による賃金、手当、福利厚生などの格差が拡大しています。非正規労働者が増大するなかで、抜本的な処遇改善、格差の是正は喫緊の課題です。
Q7 (Q6で導入すべきと答えた政党へ)
「同一労働同一賃金」とはいかなる内容を意味するのか。具体的にお答えください。
回答
自民党
「同一労働」「同一賃金」は、一般に、「同じ労働」に対して同じ賃金を支払うべきという意味であると考えます。
民進党
様々な評価項目で職務内容を評価し、異なる職務であっても、同じ価値の職務であれば、同じ賃金が支払われるようにする「同一価値労働同一賃金」を確立すべきである。
共産党
仕事が異なっていても男女間に不合理な賃金格差がある場合、女性が集中する仕事と男性が集中する仕事のそれぞれの仕事内容を比較して、同じような仕事内容であれば同じ賃金を保障するという原則です。国連は、女性に限定せず、非正規労働者などの賃金差別の撤廃にも運用できると考えています。
同一価値労働同一賃金原則は、ILO(国際労働機関)憲章(1919年)、ILO「同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約」(第100号、51年)、国連女性差別撤廃条約(79年)、欧州における男女同一賃金指令(75年)などに明記されています。欧州では、この指令を受けて、ドイツ、フランス、イタリア、デンマーク、オランダなどの諸国が、「同一労働または同一価値労働に対する男女同一賃金」を法律に明記しています。
社民党
性別、雇用形態などに関係なく、労働の種類と量に基づいて賃金を支払い、職種が異なる場合であっても労働の価値が同等であれば、同一の賃金水準を適用します。ILO第100号条約(1967年に日本は批准)で示された「同一価値労働同一賃金」を基にします。
Q8 (Q6で導入すべきと答えた政党へ)
Q7で答えた「同一労働同一賃金」を実現するために、いかなる法規制が必要か。具体的にお答えください。
回答
自民党
例えば、以下のような法整備が検討課題として考えられます。
・不合理な待遇差に関する司法判断の根拠規定を整備すること
・どのような賃金差が正当でないと認められるか等を整理したガイドラインを策定の上、当該ガイドラインの法律上の根拠を設けること
・大企業に賃金テーブルの説明を求めること
・中小・小規模企業も含め、昇給の有無や内容を労働者に明示するよう求めること
・報告徴収、助言指導、勧告等の行政指導規定を設けること
民進党
「同一価値労働同一賃金」の法律をつくり、合理的理由のない賃金・待遇の差別を禁止する。差をつけた場合は合理的理由があるかどうか、企業に立証責任を負わせる。制度導入にあたり、非正規労働者の賃金・待遇に全体を合わせることがないようにする。
共産党
「同一(価値)労働同一賃金」をはじめ賃金や有給休暇などの労働条件について正社員と均等待遇にするよう、労働基準法、男女雇用機会均等法、パート労働法、労働者派遣法などに明記する法改正をおこなうことです。有期雇用による不合理な労働条件を禁止した労働契約法第20条を厳しく守らせます。
社民党
同一労働同一賃金推進法に実効性をもたせるよう抜本的な改正が必要です。パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法についても、同一価値労働同一賃金の観点から改正が必要です。
Q9 一定額の残業代を予め基本給に組み込む、あるいは一定額の手当の形で残業代を支給する、といった方法で、実際の時間外労働時間等にかかわらず、一定の残業を行ったものとみなして定額の賃金を支払う制度(いわゆる固定残業代・固定残業手当、事実上8時間労働制の原則を変更する結果となる)について
自民党→問題があるともないとも回答せず。
民進党→問題がある
共産党→問題がある
社民党→問題がある
理由
自民党(問題があるともないとも回答せず)
いわゆる「固定残業代性」を採用していても、固定残業代の金額や相当する時間外労働等の時間数が明確であり、実際の時間外労働時間等に応じた額以上の割増賃金が支払われている限りにおいては労働基準法に違反せず、制度の是非について一概に判断することはできません。
民進党(問題がある)
ブラック企業が、残業代を払わずに長時間労働をさせるために当該制度を悪用することについては問題。
共産党(問題がある)
固定残業制は、サービス残業や長時間労働、過労死の温床となっているからです。2001年「サービス残業根絶通達(4・6通達)」が出る契機も、大手電機の「疑似裁量労働制」という固定残業制が問題になったからです。今もサービス残業は広範にあり、その規模は一人当たり年間300時間程度という調査もあります。大企業など残業時間が自己申告制の職場では、月の固定残業時間を越えてもほとんど申告できずにサービス残業です。ブラック企業の手口の一つとしても、就職時に示す賃金額を固定残業代込みで示し、入社後トラブルとなる例も後を絶たないなど、深刻な問題で早急に解決することが必要です。
社民党(問題がある)
会社の勝手な都合で定めた固定残業手当によって、従業員が過労死する事件が実際に起きています。固定残業手当などは労働者の健康や生活を損う恐れが強く反対です。
Q10 (Q9で問題のある制度であると答えた政党へ)
固定残業代・固定残業手当の制度に対して、何らかの法的規制が必要か、必要とすればいかなる規制が必要か
民進党→必要
共産党→必要
社民党→必要
理由
民進党(必要)
規制の内容(労働基準監督署による監視を厳格化することで、違法であるサービス残業を解消する。また、民進党が今年の通常国会に提出した「長時間労働規制法案」に、厚労大臣が、適正な労働条件の確保及び労働者の保護のため必要かつ適当であると認めるときは、労働基準法の規定に違反する行為を行った事業主の名称等を公表することができることを規定している。)
共産党(必要)
規制の内容(過重労働防止を目的とする過労死防止法やサービス残業をなくす観点から、固定残業代制を禁止するための法整備を進めるべき。
社民党(必要)
労働基準法の時間外・休日労働・割増賃金の箇所で規制をかけます。
Q11 企業が、求人段階(求人票の記載等)における労働条件と、実際に締結される労働契約における労働条件に相違を設けること(「求人詐欺」と呼ばれるもの)について
自民党→問題がある
民進党→問題がある
共産党→問題がある
社民党→問題がある
理由
自民党(問題がある)
求人段階の労働条件と、実際に締結される労働契約における労働条件に相違があることについては、働く方を募集した時に求人者が提示した労働条件について、その後の、求人者と求職者の交渉を経て、募集時とは異なる労働条件で労働契約が締結されることもあり得るので、一概に問題があるとはいえませんが、求職者が労働条件の一部を示さず、又は虚偽の労働条件を示して労働者を募集するようなケースへの対応は必要です。
民進党(問題がある)
昨年度、ハローワークだけでも求人票の内容が実際と異なるケースが約4000件に上っているという実態があり、問題があると考える。
共産党(問題がある)
虚偽の労働条件で求人すること自身が詐欺に当たり違法で許されない。特に新規学卒者や若者など社会経験が少ない求職者が犠牲になりやすい。
社民党(問題がある)
うその求人内容で労働者をおびき寄せる悪質な企業(いわゆる「ブラック企業」)が増え、求人とのトラブルが頻発しています。若者の雇用にも悪影響を及ぼしており、非常に問題です。
Q12 (Q11で問題があると答えた政党へ)
「求人詐欺」の手法に対して、何らかの法的規制が必要か、必要とすればいかなる規制が必要か
自民党→必要
民進党→必要
共産党→必要
社民党→必要
規制の中身
自民党(必要)
罰則の整備など、必要な規制の強化が必要です。
民進党(必要)
規制の内容(未だ不十分である企業及び事業所ごとの働き方情報(3年後離職率、残業時間、有給・育休・産休の取得率、過労死・労災死など)の開示拡大を推進する。また、民進党が今年の通常国会に提出した「長時間労働規制法案」に、厚労大臣が、適正な労働条件の確保及び労働者の保護のため必要かつ適当であると認めるときは、労働基準法の規定に違反する行為を行った事業主の名称等を公表することができることを規定している。)
共産党(必要)
規制の内容(労働者の募集時の「求人詐欺」については、ハローワークの求人不受理だけでなく、企業名公表や罰則を設ける等の規制を強化すべき。
社民党(必要)
職業安定法を改正して、悪質な企業や幹部などに懲役や罰金を科す。
Q13 違法な残業代の不払いが長年にわたって散見される状況であるが、労働基準監督官の増員は必要か
自民党→必要
民進党→必要
共産党→必要
社民党→必要
理由
自民党(必要)
労働基準法の執行を強化する観点から、監督指導の強化を実効あるものとするため、必要な人員体制の整備を含め、監督指導・捜査体制の強化を行うことが重要です。
民進党(必要)
残業代の不払いなどを行うブラック企業が大きな社会問題となっている状況に対応するため。
共産党(必要)
定員削減で、直接職場に監督に入れる監督官が減少しており抜本的に増員が必要。
社民党(必要)
労働行政を充実・強化するためには労働基準監督官の増員が不可欠です。
Q14 現行の労働基準法上、労働時間の記録について明文の規定もなく、罰則もない状況であるが、規制は必要か
自民党→必要とも不要とも回答せず。
民進党→必要
共産党→必要
社民党→必要
理由
自民党(必要とも不要とも回答せず)
労働者の健康やワーク・ライフ・バランスを確保する上で、労働時間の把握は重要だと考えています。このため、現在提出している労働基準法等改正案に基づき、厚生労働省において、労働時間の把握について、タイムカードやICカードによる客観的な方法によらなければならない旨を省令に規定する方針と認識しています。
民進党(必要)
規制の内容(民進党が今年の通常国会に提出した「長時間労働規制法案」に、使用者に対して、労働時間管理簿を調製し、各労働者の労働した日ごとの始業・終業時刻、労働時間を記入することを義務付け、違反した場合には罰則を科すことを規定している。)
共産党(必要)
→規制の内容(使用者に労働時間管理台帳の整備を義務付け、労働時間把握も自己申告でなく、使用者自らが労働時間を現認し記録することを義務付ける。
社民党(必要)
労働者の健康、生活時間を守るために、総労働時間短縮の観点から労働基準法に上限時間規制を設ける。「休息時間(勤務間インターバル)規制」(勤務時間終了後から次の勤務開始までに最低11時間の休息を労働者に保障)を創設する。