ブラックバイトを,辞めます【居酒屋編】


私は大学1年生。とある居酒屋でバイトしている。


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入ってみて分かったけど,とにかく拘束時間が長い。仕込みから閉店までずっといなきゃいけないし,ずっと立ちっぱなしでキツイ。

こんな状況だから周りのバイトがどんどん辞めて人手不足に。

ここ二ヶ月ずっと休みなしでシフトに入っている。

おかげで大学の授業に全然出られない。


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学費を稼ぐために始めたバイトなのに,これじゃあ本末転倒だ。

残業代も一切でないし。強面の店長には怒鳴られるし。

今日ははっきり辞めることを伝えてやる!

 

バ「店長!。」


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長「あぁ?」


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バ(くそう・・この顔面の迫力はもはや凶器だ・・でも,負けない!)

バ「話があります。俺,バイト辞めます!」


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長「あ?よく聞こえない。もう一回言ってみろ。」


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バ(なんだよその耳は・・・)「辞めます!」


長「このクソ忙しい時期にお前が辞めたらどんだけ困るか分かってんのか。」


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バ「リーゼントでグリグリするの止めてください。パワハラです。」


長「この繁忙期にお前がいなくなったら店回らねえだろうが。辞めさせるわけねえだろ!そこんとこヨロシク。」


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バ「全然ヨロシクありません。法律上は二週間前に言えば原則として退職できるんです(※1)。
これを阻止することはできませんよ!」


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長「お前が辞めたら店に損害でるから損害賠償請求してやるからな。1000万円ぐらいは請求してやる!。」


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バ「バイトが辞めたぐらいでそんな損害でるわけないでしょ!代わりを雇えばいいだけなんだから!

だいたいバイト一人にそんな時間と費用かける余裕ないでしょこの店!


それからね,2ケ月間一日も休まず,しかも毎日残業してるのに,残業代一円も払ってないじゃないですか。

明らかに違法ですよ!この残業代は払ってもらいますからね。」


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長「タイムカードもねえのにどうやって残業証明するんだよ!」


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バ「スマホの残業代アプリで全部記録してますから!


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それからね,今まで私のミスを理由に給料から天引きされてた分も請求させてもらいますよ。

労働者の同意が無いのに天引きするのは違法なんですからね。

そもそも,些細なミスまでバイトが損害を賠償する義務はないんですから!

バイトが損害賠償責任を負うのはわざと店に損害を与えたような場合だけですよ!(※2)」


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長「この野郎,,,俺を怒らせたな。。。」


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バ「で?」


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長「じゃあこれはどうだ!」


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バ「で?」


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長「分かった。俺だって困ってるんだ。本部から締め上げられて,安い人件費で売り上げを上げないといけないんだよ。

お前の負担はなるべく減らすようにする。だからこのとおりだ。頼む。」


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バ「それ,五郎丸ポーズじゃないですか。さりげなく流行ぶっこまないでくださいよ。全然誠意伝わんねえ。私は辞めます。」

長「俺だって休んでないし,残業代も出ないんだ。店長だからな。分かってくれよ。」

バ「店長,ただの社員ですよね。残業代出ますよ。」

長「え,俺,管理監督者じゃないの。」

バ「それ,いわゆる名ばかり店長ですよ。店長の働き方からして管理監督者なわけない。店長も犠牲者です。悪いのは経営者です。」
長「そうだったのか,おれも給料をごまかされていたのか。。そう考えると何か頭に来たな。ちょっと他の社員にも声をかけて会社に文句言ってやるか。」
バ「そうしてください。応援してますよ。」


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そんなうまいこと論破できねえよと思った方は,下記の退職届の書式を使ってください。
【退職届書式】

これを郵送なり持参して置いておくなりすれば,雇用契約を解消できます。

労働者には「辞める権利」があります。

※1 アルバイトの場合,雇用契約書が取り交わされないケースもあります。そうなると,雇用期間を定めなかったことになりますので,法律的には無期雇用契約となります。そして,無期雇用契約の場合,解約の申し入れをしてから2週間で雇用契約は終了します。

これに対し,雇用契約書が取り交わされ,雇用期間が明示されている場合,有期雇用契約となります。有期雇用契約はその期間内は解除できないのが原則ですが,「やむを得ない事由」があれば解除できます。残業代を払わない等法律に違反している場合や,シフトを入れられすぎて学業と両立できない状態になっている場合は「やむを得ない事由」があると言うべきでしょう。この点は【塾講師編】でも触れています。

なお,1年を越える期間の有期雇用契約の場合,労働基準法137条により,最初の1年を経過すれば,以後はいつでも退職することができます。「やむを得ない事由」は必要ありません。

ただ,例外として,高度に専門的な知識を必要とするような業務に就いている労働者や,満60歳以上の労働者に対しては,この労働基準法137条は適用されません。しかし,若い方のアルバイトは高度な専門的知識を要するとは言えないでしょうから,この例外は無関係でしょう。

※2 従業員の損害賠償責任についての詳細な解説は当弁護団団長佐々木弁護士のブログに記載してあります。



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★出演
アルバイト役:弁護士 竹村和也
店長役:弁護士 明石順平