たかの友梨ビューティークリニック(仙台)事件
第1 事件の概要
1.当事者
当方:20代と30代女性,雇用形態は正社員
相手方:日本全国でエステティックサロンを経営する大企業
2.勤務態様
当事者は、エステティシャンとして、エステティックサロンで施術を行っていた。
所定労働時間は10時~20時(休憩2時間。)しかし、朝は開店準備のために9時に出勤し、夜は掃除等を行い21時までかかることがほとんどであったし、客への対応に追われて全く休憩を取れないことが多かった(昼食も施術と施術の間に立ったまま摂っていた)。また、業務時間外に新人への教育をすることを命じられ、8時出勤や23時退勤となることもあった。
以上のような勤務状況のため、月の残業時間が80~100時間に達することもあったが、それに対する残業代は支払われていなかった。
3.紛争の内容(法的な論点等)
上記のような状況であったことから、当事者はエステ・ユニオンに加入し、団体交渉を行っていた。しかし、会社の団体交渉での対応が不誠実であったことから、労働基準監督署に申告を行い、是正勧告が出された。
そのことを公表する記者会見を行おうとしたところ、会社の社長(当時)が仙台を訪れ、当事者らに対し「会社を潰すつもり?」などと恫喝した。この点については、その後、会社から謝罪がなされたが、残業代については当方の主張した額を支払う意思を見せなかったため、平成26年10月29日、仙台地方裁判所に提訴した。
法的な論点としては、会社が支払っていた「調整手当」が固定残業代として有効か否かというものがあり得たが、想定された残業時間を超過した場合の精算に関する規程や精算の実態がないこと等から、有効であるとはいえないことは明らかであった。
第2 結果
平成27年1月26日、訴外で和解が成立し、訴訟を取り下げた。
なお、会社とエステ・ユニオンとの間では、子どもが小学校入学までの時短勤務と小学校在籍中の残業免除を認める画期的な内容を含む「ママ・パパ安心労働協約」が締結された。
第3 担当弁護士コメント
提訴に至るまでの経過において、たくさんのことが起こった事件であった。
労働組合との協働によって大きな成果が得られた事件であり、労働事件への取り組み方の新たな可能性を切り開いたのではないかと考える。