ブラック法案によろしく

「残業代ゼロ法案」と「残業代をカットできる制度の対象業務拡大」の問題点をまとめました。

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【ブラックジャックによろしく 佐藤秀峰 漫画 on web 】
「ブラックジャックによろしく」二次利用規約
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残業代が無くなれば,無駄な残業が減る?


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「残業代が無くなれば,無駄な残業が無くなるだろう」。残業代ゼロ法案の支持者はまことしやかにこう言います。

しかし,働いている皆さんが一番分かっていると思いますが,ブラック企業は元々残業代を支払いません。たくさんの方々がサービス残業をさせられています。その結果,長時間労働がこの国に蔓延しているのです。

残業代が無くなれば,今の違法状態が適法になるだけです。

ブラック企業は大喜びでしょう。正に,「ブラック企業に栄養を与える法案」です。

 

対象は一部の高給取りだけ?


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「残業代ゼロ法案」の対象者は,今のところ年収1075万円以上の方になる想定のようです。しかし,これは絶対に後で広げられます。

現に,派遣法について,最初は対象者を限定していたのに,徐々に対象を広げ,ついには原則と例外が逆転してしまった,という前科がこの国にはあります。残業代ゼロ法案についても同じ手法が取られる可能性は濃厚です。

「小さく産んで,大きく育てる」。国民の抵抗を受けやすい法律を作る際に使われる常套手段です。これは消費税もそうですね。最初は3%だったのに,今や10%にされようとしています。

 

国会通さず対象拡大?


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残業代ゼロ法案では,適用対象者の拡大を,主任大臣の定める省令によって行うことが想定されているようです。省令は法律ではありませんので,国会を通す必要がありません。したがって,対象を拡大するのは,法律を改正するよりも容易です。

省令によってじわじわと対象が拡大されていくことは確実でしょう。

なお,残業代ゼロ法案では,この省令で定める額について,一応「平均年収の3倍を相当程度上回る」ことが要求されています。しかし,安心はできません。倍数で決められている点がポイントです。例えば,「平均年収の2倍を相当程度上回る」と法改正されれば一気に対象者が広がってしまいます。

すなわち,この条文は改正によって対象者を広げやすい書き方をしていると見ることもできるのです。油断はできません。

 

本音はどこ?


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かつて日本経団連は,年収400万円以上のホワイトカラー労働者の残業代を無くすよう提言しました。

http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2005/042/teigen.pdf


↓上記提言の概要が1枚にまとめられているのがこちら。

https://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2005/042/gaiyo.pdf


↓さらに,上記概要の気になる部分を抜粋したのがこちら。経団連が発表しているものではありますが,政府の本音を示唆する重要な資料です。

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成果主義ってもうやってるでしょ?


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「残業代が無くなれば,成果主義になって自分の成果が正当に評価される」。これもよく言われることですが,成果主義の実現は,現行法でも可能であり,多くの企業で導入されています。完全歩合給制や,基本給に成果給を組み合わせる方法がそうです。ただし,それは長時間労働の原因の一つになっており,安易に肯定できるものではありません。

以上のとおり,現行法下で既に実行されていますので,「成果主義の実現のため」というのは,残業代をゼロにする理由になりません。

 

みんな成果主義になるの?


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「残業代が無くなれば,成果主義になって自分の成果が正当に評価されるようになる」。この主張はあたかも残業代ゼロ法案が通ればみんな成果主義の給与体系になるかのような誤解を与えます。

しかし,残業代ゼロ法案が成立しても,成果主義が義務付けられるわけではありません。

今までどおり固定給が維持されれば,単に残業代がカットされるだけです。そしておそらく多くの企業がそうするでしょう。人件費を簡単に抑制できるのですから。

 

時間ではなく成果で評価される制度??


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大事なことなのでもう一度言います。残業代ゼロ法案が成立しても成果主義が義務付けられるわけではありません。

「時間ではなく成果で評価される制度」「脱時間給」等と報道されていますが,そんな内容は平成27年4月3日に閣議決定された下記残業代ゼロ法案に一言も書かれていません。これらは明らかな誤報です。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/189-43.pdf

絶対に騙されてはいけません。この法案の目的は単に残業代をゼロにしたいだけなのです。

 

1年360日働くか,1日24時間働くか


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残業代ゼロ法案の適用対象者は,労働基準法の労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定が適用されません。その代わり,残業代ゼロ法案では,適用対象者に対し,下記の健康確保措置のいずれか1つを取ることになっています。言い換えると,1つだけ選べばいいのです。


(1)労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し,かつ,深夜業の回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。

(2)健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。

(3)四週間を通じ四日以上かつ一年間を通じ百四日以上の休日を確保すること。


(1)を選ぶと,例えば,今度の改正案において義務付けされる年間5日間の有給休暇さえ与えれば,360日連続勤務も合法になる,という結論になります。

(3)を選ぶと,一定数の休日は与えなければいけませんが,24時間勤務を命じることが可能になります。

上記の措置が全く健康確保につながらないのは明白です。この法案が労働者の健康を全く考えていないことがよく分かります。

 

残業代をカットできる制度の対象業務を拡大?


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残業代を合法的にカットできる制度として,企画業務型裁量労働制というものがあります。これは予め決められた時間働いたと「みなす」制度です。例えば,予め決められた時間が8時間であれば,実際何時間働いたとしても,8時間働いたとしかみなされません(※この制度でも休日,深夜の割増賃金は発生します) 。

現行法上,その対象業務は,「事業の運営に関する事項についての企画,立案,調査及び分析の業務」であることがまず必要とされています。政府はこの部分に新たな類型を追加しようとしているのです。

そして,追加が予定されている対象業務は,漫画のセリフのとおり,一見するとよく意味が分かりません。しかし,これをじっくり読んで考えてみると,驚くほど広範囲の業務が含まれるのです。この点につき,日本労働弁護団の意見書では,具体的に下記の危険性を指摘しています。

http://roudou-bengodan.org/proposal/detail/post-79.php

①店頭販売等の極めて単純な営業以外の個別営業業務が対象に入る可能性がある。

(※法人相手の営業業務が全て入ってしまう可能性すらあります。)

②現場で業務管理を行う労働者がすべて対象とされる危険がある。

残業代ゼロ法案と同時に,こんな危険な制度も実現されようとしています。これは残業代ゼロ法案に匹敵する重大な問題です。

 

成果を出さないと帰れない?


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成果主義かつ残業代ゼロの会社を想像してみましょう。

「成果も出してないくせに帰るな」と言われそうですね。現時点でもそういったことを言われている人はいるでしょう。そしてそれが際限の無い長時間労働へつながっていきます。

「成果主義」にも抑制が必要です。その抑制となるのが残業代です(※現行法では,たとえ完全歩合給制であっても残業代は発生します)。

 

「早く帰れ」と言われなくなる


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法令を遵守しつつ,人件費を抑えるには,残業代を抑制する必要があります。

そこで,法令を遵守する会社は従業員に「早く帰れ」と言うでしょう。更に,言葉だけではなくて,実際に従業員を早く帰らせる方策を実行するでしょう。

ところが,残業代が無くなってしまえば,もはやそんなことを言う必要は無くなります。

そうなれば,今まではそうでなかった会社であっても,長時間労働が常態化する可能性は極めて高いでしょう。

 

働く時間には限界がある


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人間の働く時間には限界があります。

労働者を保護する最初の法律は,1802年にイギリスで生まれました。これは,使用者が労働者を長時間酷使しすぎた結果,労働者の健康が著しく害されたことが原因です。このとき,「人間の働く時間には限界がある」ということが認識されました。そして,労働者を保護するための法律が整備され,やがて同様の法律が世界中に広まったのです。

働き方が変わっても,働く時間に限界があることに変わりはありません。ですから,法律で「残業代」という「罰」を与えることにより,長時間労働を抑制しようとしているのです。残業代ゼロ法案は,「成果」をことさらに強調し,「人間の働く時間には限界がある」という事実から目を背けています。人類の歴史に逆行する法案です。

 

命の問題です


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残業代は,長時間労働を抑制するほとんど唯一のブレーキです。しかし,現状でさえこのブレーキは不十分な働きとなっており,悲惨な過労死や過労自死が相次いでいるのです。

この上ブレーキを無くしてしまったらどうなるか,その結果は見えています。残業代ゼロ法案は目先の利益を追求し,働く方々の命を軽視しています。明らかに時代に逆行する法案です。

 


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