ブラックバイトを,辞めます【個別指導塾編】
私は大学二年生。個別指導塾「抜け駆け!漢塾」で塾講師のバイトをしている。
このバイト,コマ給といって,自分が担当する授業のコマ分しか給料が出ない。
しかし,やることは授業だけではない。報告書の作成,教室の掃除,生徒や親との面談,補講,ミーティングもやらなければいけない。
これらの授業以外のことにもの凄く時間をとられる。でも,その時間の給料は出ない。
おかげで大学の授業にも出られない。テストがあると言っても休ませてくれない。
学費を稼ぐためにバイトを始めたのに,このままでは留年してしまい,本末転倒だ。
ちゃんと学業と両立できるアルバイトに移りたい。
今日は勇気をもって塾長に退職を告げに行く。
大丈夫,事前に弁護士に相談して法律のことをちゃんと勉強してきた。
俺は負けない!
バ「塾長!」
長「あ~ん?」
バ(くそう・・この顔面の迫力はもはや凶器だ・・でも,負けない!)
バ「話があります。」
長「おう。何だか悪い予感がするのう。」
バ「俺,バイト辞めます!」
長「あ?よく聞こえない。」
長「ちょっと待て,今よく聞こえる耳を用意する。」
長「よし。語れ。」
バ(なんだよその耳は・・・もう,ビジュアルが凄いことになってるよ!全然聞く気ねえだろ!)
バ「辞めます!」
長「このクソ忙しい時期にお前が辞めたらどんだけ困るか分かってんのか。
だいたいなあ,お前有期雇用契約だぞ。期間の途中で辞められると思ってんのか。」
バ「そう来ると思いましたよ。有期雇用契約でも『やむを得ない事由』があれば辞められるんです!」
長「具体的に何があるんじゃあ!」
バ「まずコマ給ですよ。この塾は授業時間に対してしか給料払ってませんけどね,
それ以外の準備時間,報告書作成時間,面接時間,ミーティング,掃除,補講に対しても給料払わなきゃいけないんですよ。
これらの時間は使用者の指揮命令下にあると言えるからです。
つまりね,漢塾は給料を一部払っていないんですよ!これ違法ですよね!後で全部請求させてもらいますからね!
さらに,バイトが忙しすぎて大学の授業に出席もできません。
このままいったら留年です。我々学生の本分は勉強なんですよ!
給料を違法にごまかされた挙句勉強よりバイトを優先しろだなんて,むちゃくちゃでしょう!
『やむを得ない事由』があることははっきりしています!」
長「ふん。辞めたら損害賠償請求してやるからな!」
バ「やれるもんならやってみなさい。
やむを得ない事由があるのはさっき言ったとおりだし,だいたい,バイト一人を相手に時間と金をかけて訴訟をやるんですか?
代わりの人を雇った方がはるかに早いでしょう?そんなこけおどしには屈しませんよ!」
長「ほう,お前を頼りにしている塾生達を置いて辞めるのか。お前は血も涙もないのう。。」
バ「論点をすり替えないで下さいよ。卑怯です!
大学生活と両立できるようなシフトを組んで,さらに授業以外の労働時間分の給料も払ってくれたら私だって辞めませんよ。
経費を節約してその負担を学生アルバイトに押し付けるのが悪いんでしょう!
学生が弱い立場だからってそれを最大限利用している。
卑怯です!だいたいね,個別指導とか言っといて1クラス7~8人もいるじゃないですか。
全然個別じゃねえし!」
長「この野郎,,,俺を怒らせたな。。歯あ食いしばれ。。」
バ「な,殴るんですか?親父にもぶたれたこと無いのに!」
バ(そっちかよ・・・)うさ耳で殴らないで下さい。パワハラです。」
バ「スチャッ。じゃなくて。うさ耳無理やりつけないで下さい。パワハラです。」
長「やってらんねえよ!」
バ「で?」
長「分かった。まさか俺のズラにツッコミを入れずに被り返すとは思わなかった。
謝るから辞めるなんて言わないでくれよ。俺だって休んでないし,残業代も出ないんだ。
塾長だからな。分かってくれよ。」
バ「塾長,ただの社員ですよね。残業代出ますよ。」
長「え,俺,管理監督者じゃないの。」
バ「それ,名ばかり店長とかと同じ問題ですよ。塾長の働き方からして管理監督者なわけない。塾長も犠牲者です。悪いのは経営者です。」
長「そうだったのか,おれも給料をごまかされていたのか。。そう考えると何か頭に来たな。ちょっと他の社員にも声をかけて会社に文句言ってやるか。」
バ「そうしてください。応援してますよ。」
そんなうまいこと論破できねえよと思った方は,下記の退職届の書式を使ってください。
【退職届書式】
これを郵送なり持参して置いておくなりすれば,雇用契約を解消できます。
労働者には「辞める権利」があります。
■コンビニ編はこちら
■居酒屋編はこちら
★出演
アルバイト役:弁護士 江夏大樹
塾長役:弁護士 明石順平